相続土地国庫帰属制度における「農地」の判断について

相続土地国庫帰属制度における「農地」の判断について
相続土地国庫帰属制度
 ~相続した土地を国に帰属させたいとき~

事例紹介

・相続土地国庫帰属制度の承認申請書作成代行

茨城県 (事務所ホームページのお問い合わせフォームからご依頼いただいた事例。)
別荘地 (事務所ホームページを見て電話された方からご依頼いただいた事例。)

・仮杭設置及び図面作成

佐賀県 (登記記録の地目:山林、現況地目:雑種地。境界標なし、対象地及び隣接地は全て更地。)

佐賀県 (地目:宅地。境界標一部あり、隣接地の一部に建物がある土地。

報酬額(税込

・相続土地国庫帰属制度の承認申請書作成代行 30万円~
詳細は、「相続土地国庫帰属制度の承認申請書作成代行費用はいくらですか?」をご覧ください。
※審査手数料(1筆当たり14,000円)及び負担金(1筆当たり20万円が基準)が別途発生します。

・仮杭設置及び図面作成 15万円~
詳細は、「相続土地国庫帰属制度業務の「仮杭設置及び図面作成」を
土地家屋調査士にお願いした場合の費用はいくらですか?
」をご覧ください。

ご依頼の流れはこちらです。
(ご相談→概算御見積金額のご提示→正式御見積金額のご提示→業務着手)

相続土地国庫帰属制度における「農地」の判断について

1 負担金の分類

2 相続土地国庫帰属制度上の農地とは?

3 農地法上の農地とは?

4 不動産登記法上の農地とは?

5 農業振興地域の整備に関する法律上の農用地及び農用地区域とは?

6 土地改良法上の農用地及び土地改良事業とは?

7 相続土地国庫帰属制度における「農地」の判断について

1 負担金の分類

「宅地」「農地」「森林」「その他」の4種類に種目が区分されており、種目に応じて負担金額が決定します。
詳細は法務省ホームページ「相続土地国庫帰属制度の負担金」をご覧ください。
法務省ホームページ「https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00471.html」から引用したものです。

2 相続土地国庫帰属制度上の農地とは?

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令(令和4年政令第316号)第5条第1項第2号により、相続土地国庫帰属制度の負担金の「農地」がどういったものなのか定められています。該当部分の条文は以下のとおりです。

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令
(負担金の算定)
第5条 法第10条第1項の政令で定めるところにより算定する金額は、次の各号に掲げる土地の区分に応じ、当該各号に定める金額とする。
二 主に農地(農地法(昭和27年法律第229号)第2条第1項に規定する農地をいう。)として利用されている土地のうち、都市計画法第7条第1項に規定する市街化区域の区域内農業振興地域の整備に関する法律(昭和44年法律第58号)第8条第2項第1号に規定する農用地区域内又は土地改良法(昭和24年法律第195号)第2条第2項に規定する土地改良事業若しくはこれに準ずる事業として法務省令で定めるものが施行される区域内にあるもの

3 農地法上の農地とは?

農地法第2条第1項により定められています。該当部分は以下のとおりです。

(定義)
第二条 この法律で「農地」とは、耕作の目的に供される土地をいい、「採草放牧地」とは、農地以外の土地で、主として耕作又は養畜の事業のための採草又は家畜の放牧の目的に供されるものをいう。

4 不動産登記法上の農地とは?

「農地」という地目は定められていませんが「田」及び「畑」については、不動産登記事務取扱手続準則(平成17年2月25日付け法務省民二第456号法務省民事局長通達)第68条第1号及び第2号により定められています。該当部分は以下のとおりです。

(1) 田 農耕地で用水を利用して耕作する土地

(2) 畑 農耕地で用水を利用しないで耕作する土地

前提として、不動産登記規則(平成17年法務省令第18号)第99条により、地目は、土地の主な用途により、田、畑、宅地、学校用地、鉄道用地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、墓地、境内地、運河用地、水道用地、用悪水路、ため池、堤、井溝、保安林、公衆用道路、公園及び雑種地に区分して定めるものとする。とされています。

5 農業振興地域の整備に関する法律上の農用地及び農用地区域とは?

農業振興地域の整備に関する法律第3条により「農用地」について定められています。該当部分は以下のとおりです。

(定義)
第三条 この法律において「農用地等」とは、次に掲げる土地をいう。
一 耕作の目的又は主として耕作若しくは養畜の業務のための採草若しくは家畜の放牧の目的に供される土地(以下「農用地」という。)
二 木竹の生育に供され、併せて耕作又は養畜の業務のための採草又は家畜の放牧の目的に供される土地(農用地を除く。)
三 農用地又は前号に掲げる土地の保全又は利用上必要な施設の用に供される土地
四 耕作又は養畜の業務のために必要な農業用施設(前号の施設を除く。)で農林水産省令で定めるものの用に供される土地

また、農業振興地域の整備に関する法律第8条第2項第1号により「農用地区域」について定められています。該当部分は以下のとおりです。

一 農用地等として利用すべき土地の区域(以下「農用地区域」という。)及びその区域内にある土地の農業上の用途区分

6 土地改良法上の農用地及び土地改良事業とは?

土地改良法第2条第1項により「農用地」について定められています。該当部分は以下のとおりです。

(定義)
第2条 この法律において「農用地」とは、耕作(農地法(昭和27年法律第239号)第43条第1項の規定により耕作に該当するものとみなされる農作物の栽培を含む。以下同じ。)の目的又は主として家畜の放牧の目的若しくは養畜の業務のための採草の目的に供される土地をいう。

また、土地改良法第2条第2項により「土地改良事業」について定められています。該当部分は以下のとおりです。

2 この法律において「土地改良事業」とは、この法律により行う次に掲げる事業をいう。
一 農業用用排水施設、農業用道路その他農用地の保全又は利用上必要な施設(以下「土地改良施設」という。)の新設、管理、廃止又は変更(あわせて一の土地改良事業として施行することを相当とするものとして政令で定める要件に適合する二以上の土地改良施設の新設又は変更を一体とした事業及び土地改良施設の新設又は変更(当該二以上の土地改良施設の新設又は変更を一体とした事業を含む。)とこれにあわせて一の土地改良事業として施行することを相当とするものとして政令で定める要件に適合する次号の区画整理、第3号の農用地の造成その他農用地の改良又は保全のため必要な事業とを一体とした事業を含む。)
二 区画整理(土地の区画形質の変更の事業及び当該事業とこれに附帯して施行することを相当とする次号の農用地の造成の工事又は農用地の改良若しくは保全のため必要な工事の施行とを一体とした事業をいう。)
三 農用地の造成(農用地以外の土地の農用地への地目変換又は農用地間における地目変換の事業(埋立て及び干拓を除く。)及び当該事業とこれに附帯して施行することを相当とする土地の区画形質の変更の工事その他農用地の改良又は保全のため必要な工事の施行とを一体とした事業をいう。)
四 埋立て又は干拓
五 農用地若しくは土地改良施設の災害復旧(津波又は高潮による海水の浸入のために農用地が受けた塩害の除去のため必要な事業を含む。)又は土地改良施設の突発事故被害(突発的な事故による被害をいう。以下同じ。)の復旧
六 農用地に関する権利並びにその農用地の利用上必要な土地に関する権利、農業用施設に関する権利及び水の使用に関する権利の交換分合
七 その他農用地の改良又は保全のため必要な事業

7 相続土地国庫帰属制度における「農地」の判断について

農地法上、農地かどうかの判断は、現況主義です。登記記録の地目が「宅地」であったとしても、現況の地目が「田」又は「畑」の農地である場合は、農地であると判断されます。

次に、不動産登記法上の農地の判断について説明します。
不動産登記事務取扱手続準則第68条により、地目の判断は、土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的にわずかな差異の存するときでも、土地全体としての状況を観察して定めるものとするとされています。

また、農業振興地域の整備に関する法律上の農用地の判断についても説明します。
市町村は、農業振興地域の整備に関する法律第8条により、農業振興地域整備計画において「農用地区域」を定めなければならないとされています。
したがって、農用地がある市町村の農業振興地域整備計画の担当部署で確認すると、農業振興地域の整備に関する法律上の「農用地」の判断ができると思います。

農地法及び不動産登記法の「農地」の判断を踏まえると、相続土地国庫帰属制度における「農地」の判断は現況が農地かどうかが判断材料の1つではないかと考えることができると思います。
また、相続土地国庫帰属制度を活用したい土地が農業振興地域の整備に関する法律上の「農用地」の場合は、農用地がある市町村の農業振興地域整備計画の担当部署で確認すると、「農用地」の判断ができると思います。

最後に、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律の施行に伴う相続土地国庫帰属手続に関する事務の取扱いについて(令和5年2月8日付け民二第70号民事局長通達)の「第14節 負担金 第1 種目の判断」について記載しておきます。

第14節 負担金
第1 種目の判断
1 負担金を算定するための前提として、申請土地の主な種目が宅地、農用地(田・畑・採草放牧地)、森林又はそれ以外のいずれの種目に該当するかを法務局長等が判断するものとする(規則第22条第18号)。ただし、承認申請が却下又は不承認となる場合には、種目の判断は不要とする。
2 種目の判断に当たっては、主に農用地又は森林として利用されている土地ではないと明らかに認められる場合を除き、法務局長等から財務大臣及び農林水産大臣(財務大臣又は農林水産大臣から権限委任がなされている場合は、委任を受けた者。以下同じ。)に対し、書面調査及び実地調査の結果を踏まえた法務局長等の見解を記載した<別記第16号様式>を用いて意見を聴取するものとする(法第8条、規則第18条)。
3 法務局長等は、前記2の意見聴取において財務大臣及び農林水産大臣から提出を受けた意見を考慮の上、種目の最終判断を行うものとする。
  • 当事務所は、土地の筆界の専門家である土地家屋調査士に加え、農地転用相続土地国庫帰属制度業務の実績がある行政書士が専門知識と実体験を踏まえながら、ご相談を承ります。
  • 相続土地国庫帰属制度業務については、私が実際に受任した案件を通じて気づいたことや法務局に確認した内容をブログにも掲載しています。
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